2016年1月31日日曜日

【なりきりマインクラフト #1】たった一人の世界

目が覚めた古賀しげるは、自分の周りに異変が起きていることに気付いた。

まず、見上げると見慣れた天井のシミがない。
寝返りをうって横を見ると、壊れた目覚まし時計がない。
枕元を見ると、見飽きたエロ本がない。



そのかわりと言ってはなんだが、周りは木々や緑の葉っぱに囲まれていた。
これが夢の続きだといいのだが、、、と古賀しげるは思ったのだが、どうやら夢ではないらしい。
というのも、先ほどから爪先に蟻みたいな虫が食いついていて痛いのである。
痛みを感じるということは夢ではないのだということである。



もしかすると、ちょっと歩けば自分の家にたどり着くかもしれないと思い、木々を掻き分け
前進すると、目の前に池が広がっていた。



古賀しげるは、喉が渇いていた。
だが、この池の水を飲んで良いか迷った。
出所が分からない水を飲むと、腹痛を起こす可能性と思ったのだ。
とりあえず、我慢した。

古賀しげるは、普通の男の高校生だ。
高校1年生である。
恋人はいないが、いずれはほしいと思っている。
部活はしていないが、ランニングが好きで個人的にマラソン大会に出場している。
ハーフマラソンと10kmマラソンが主戦場だが、いずれはフルマラソンにも挑戦したいと
思っている。
体力はある。
勉強のほうは、中の下といったところだ。

とりあえず、今日中に家には帰れそうもないし、スマートホンもないので助けも呼べない。
諦めた古賀しげるは、助けが来るのを待つことにした。
諦めが早いのは彼の長所ともいえる。
とりあえず、ねぐらがほしいと思った古賀しげるは、土を掘り起こし、家を作った。
この世界の土は、柔らかく掘り出しやすいので、家を作るくらいの土はすぐに集まった。
直感的にまず家を作ろうと思ったのには、彼なりの理由があった。
と言うのも、彼は、この世界を覆う雰囲気を不気味に感じたからである。
晴天で、木漏れ日も美しく、池の水もきれいなのに、人の気配がない。
代わりに何だか、聞きなれない動物の声や、足音が聞こえる。
何かに襲われたときに、逃げ込める隠れ家が必要だと思ったのだ。



夜になり、お手製の土の家に潜り込んだ古賀しげる。
入口も土で埋めた。
入口を閉じると家の中は真っ暗になった。
何かに怯えていた。
何かとは、どんなものか分からないが、こちらに危害を加える恐れがあると思ったからだ。
外からウーウーだの、グルルだの不気味な声が聞こえる。
やはり、家に逃げ込んだのは正解だと古賀しげるは思った。
家の中は灯りがないので暗闇そのものだった。
ベッドもなく、眠ることもできない。
この先どうなるか分からない。
何でここに居るかも分からない。
日中は、家を作る作業に没頭して、不安を感じなかった古賀しげるだが、暗闇の中に一人
佇んでいると不安が募ってきた。
眠れない一夜となった。



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